これから7年後の2013年には、富山県に待望の「北陸新幹線」が開業する。高速交通網の集大成とも言える事業であるが、同時に「これまでの在来線をどうするか?」という問題も発生する。

 富山県には多くの鉄道資産が残っている。これを、活かすのか?殺すのか?。県民は、新幹線開業前にどうするかを、決断しなければならない。何故なら、新幹線開業とともに、在来線は地元で引きつぐ取り決めを行っているからだ。

 モータリゼーションの発展により、鉄道需要は減り続けてきた。しかし、21世紀に入り、状況は大きく変化しようとしている。
 環境問題・資源枯渇・高齢化など、再び鉄道を始めとした公共交通機関やコミュニティー社会の重要性が謳われはじめているからだ。特に、「鉄路の復権」は目覚しいものがある。
↑在来線の連続立体高架化と新幹線の工事を待つJR富山駅

 今年開業した富山ライトレールは、日本初のLRTとして全国に注目をされた。多くの鉄路を持つ富山県は、これからの鉄道ルネッサンス時代で、先頭を切って走ることも夢ではない。今回の特集は、そんな富山の鉄道を考えたいと思う。
 富山県は、多くの鉄路を抱えているものの、決して利用者は多いとは言えない。当然、赤字路線ばかりだ。このままいけば、鉄路は序々に無くなって行くだろう。
 しかし、鉄路というものは、生活に密接し街づくりにも影響を与え、都市のステイタスとしての役割もある。そして、一度廃止してしまうと、再び鉄路を引くことは難しく、街は衰退することとなる。

↑橋上駅化工事を待つJR高岡駅
 富山市は、街なか居住を推進した「コンパクトシティ」の実現に、あえて鉄路を積極活用しようとしている。ハードルは高いものの、鉄路の復権が、富山の街づくりを変えるきっかけとなるかもしれない。しかし、こういった取り組みは、富山市だけで良いのだろうか?当HPでは、富山県全体での取り組みを提案したいと思う。


 鉄路は、大量交通機関である。当然、都市でなければ役には立たない。しかし、これからの富山県は人口減少時代に入る。かつてのように、「鉄路を引けば人が集まる」という時代ではなくなって来ているのだ。
 では、全国から人が集まる「魅力ある都市」とは、どうゆうものなのか?。キーワードは、やはり「政令指定都市」だろう。ある程度の都市基盤を持ち、全国から人の出入りが活発である都市は、経済活動でも魅力が高くなり、結果として自然と鉄道網の利用も多くなる。富山県で、「鉄路復権」を目指す為にも、政令指定都市の実現可能性を探る必要があるのだ。
 富山高岡広域都市圏は、下記の都市エリア地図を見て頂いてもわかるように、他の政令指定都市と、遜色がない「都市基盤」を持っている。
 仮に、富山高岡広域都市圏を、「ひとつの大都市」として、捉えることが出来れば、鉄路復権の方法が見えてくるだろう。勿論、当HPが推奨する富山高岡広域都市圏での合併、政令指定都市化が出来れば、鉄道への補助予算も大幅に増え、魅力ある鉄道再編が可能となるはすだ。
 富山市と高岡市が合併する場合、どうしても「面積の大きさ」や「都市圏幅の長さ」を、問題とされる場合がある。しかし、上の地図を見て頂ければわかるように、先行する他の政令指定都市と比較しても、決して富山高岡広域都市圏は、「面積がデカイ」わけでもなく、「都市圏エリア幅が長すぎる」わけでもない。
 むしろ、住み易さを確保しつつ、適度な都市構造を有してると言えるだろう。しかし今後、少子化・大都市への人口流出で、政令指定都市をクリアできる人口の維持には、時間的なリミットがある。残された時間は、短いと言える。

<もし、高岡市から新湊が分離してなければ‥>

 戦後まで、旧新湊市は高岡市に属していた。これは、かつて富山市と高岡市は、隣り合う都市だったということを意味する。↓
 左の地図を見てもらってもわかるように、富山市と高岡市は、両手で射水郡を包み込むような形をしている。つまり、戦後まもなくまでは、都市形成として、まさしく「富山高岡広域都市圏」が「ひとつの都市」を成していたといえるである。
 しかし昭和26年1月に、新湊は高岡市から分離をしてしまう。
 もし、新湊市が分離しなければ、平成の大合併は、違った結果になっていたのは間違いないだろう。富山県が示した合併パターン案には、何故か「富山高岡広域都市圏をひとつにする案」はなかった。もし、高岡市から新湊が分離していなければ、どうなっていただろうか?。
 将来の富山県全体を考えれば、大きな決断も必要である。富山市と高岡市が合併する。これは「ありえない話」や「タブーな話」と、決め付けてはいけないのだ。



 現在でも、多くの鉄路を有する富山県。昭和40年頃には、鉄道賛歌のような路線網が描かれていた。しかし、残念ながら多くの路線は消えて行くこととなった。
 特に、富山高岡新産業都市の指定を受けて、富山ー高岡間を結ぶ鉄道路線構想がいくつもありながら、実現しなかったのは残念でならない。

<もし、かつての鉄路が残っていたならば‥?>

 富山地鉄では、戦後まもなく「富山金沢高速鉄道構想」が検討され、その後、地鉄から分社された加越能鉄道が、「富山高岡線構想」を引き継いだ。用地買収まで進むものの、結局は建設を断念。跡地は、現在「富山高岡サイクリングロード」となっている。
↑現在も残る加越能鉄道「井波線」の井波駅舎跡
 また、路面電車方式の地鉄射水線は、富山ー新湊ー高岡間を結んでいた。しかし、こちらも富山新港の竣工で、鉄路は東西に分断されてしまう。そして、富山側がその後に廃線となった。もし、橋やトンネルで、鉄路が分断されないでいたならば‥、もっと違った結果になっていたかもしれない。
 この他にも、ルートが確定していた富山新港に繋がる臨海鉄道構想など、「富山高岡一都市化」に結びつく鉄路が、いくつもあったのだ。

↓「井波線」跡のサイクリングロード(旧庄川町)
 もし、富山高岡間の廃線鉄路が全て残り、構想鉄路も実現してたならば、これからの「富山の鉄道ルネッサンス時代へ」、多いに役立っていたであろう。そして、富山市と高岡市の合併も、当の昔に実現していたかもしれない。
 「富山の鉄道ルネッサンス時代へ」は、単に鉄道を建設するだけではなく、いかに「街づくり」・「都市づくり」をするか?‥という点から考え始めないといけないだろう。当HPでは、富山高岡広域都市圏を、「富山県の生命線あるいは中心軸」と位置付けることで、「将来性の確保を!」と考えている。
 富山の鉄道網再編も、富山高岡広域都市圏を活かすものにしたいものだ。(上の図を参照)
 まずは、富山市圏。ここは、LRT路線の拡充を目指したい。現在の構想にある市内軌道の環状線化と富山ライトレールの市内軌道への乗り入れ化を図るのだ。次に、既存鉄道を活用した「山の手線」のような「富山環状線」を設けて、都市生活のステイタスを高めさせる必要がある。
 県西部は、城端線を新交通システムのモデル路線として誘致したい。氷見線は路面電車化を図り、氷見海鮮館までの延長や新駅増設を行う。新川は、北陸線と平行して走る地鉄の運行統合化で利便性を高め、新幹線「新黒部」へのアクセス用「鉄道ジャンクション」も設ける。


<もし、加越能鉄道の構想が実現していたならば‥‥?>

 加越能鉄道は、もともとは富山地方鉄道(略称:地鉄)から分社化された鉄道会社。社名からもわかるように、加越能鉄道は、加賀・越中・能登を結ぶ鉄道会社を目指していた。高岡市を軸に、富山へ・七尾へ・そして金沢へ、鉄路で結ぶもの。用地買収で、計画が中止された富山高岡線。能登へは、氷見から北上して七尾へ。そして、高岡から金沢へも。
 もし、これらの鉄道構想が実現していたならば、高岡市は、まさに「鉄都」となっていたであろう。
 また、富山ー高岡間は、大都市圏に負けない魅力的な地域に成長してたかもしれない。時代は移り変わり、再び鉄路が見直されてきた。だからと言って、かつて加越能鉄道が夢見たような大構想は復活することがないだろう。しかし、越中で再び鉄路が息づきはじめてるのも確かだ。どう大きく育てるか。それは、「都市再編」といった大きな取り組みと、「コミュニティ社会」といった小さな取り組みを、組み合わせてこそ実現できるのではないだろうか。

 政令指定都市以上の大都市では、今でも新しい鉄路が誕生している。最近でも、「つくばエクスプレス」「都営地下鉄大江戸線」「中部国際空港連絡線」を始め、今後も「大阪外環状鉄道」「仙台空港連絡線」や地下鉄・新交通システムの建設が進んでいる。一方で、対照的に地方都市では鉄路は消えているのだ。
 富山での「鉄路復権」。これは、一種「地方都市の星」かもしれない。しかし、富山といえども地方都市だ。人口減少が加速すれば、鉄路復権も一時的ということになりかねない。政令市へ向けての「都市再編」にいかに取り組むか?。鉄路復権への大きな課題といえるだろう。


<鉄道は「目的地」が必要>

 人が鉄道を利用するのは、「目的地」があるからこそ。その「目的地」に魅力があれば、多くの人はそこを目指すだろう。魅力がなくなれば、「目的地」とはならないのだ。
 富山県で、鉄路を復権させるには、この「目的地」を、魅力あるものにしなければならない。
 いまの富山高岡広域都市圏は、魅力があるといえるだろうか?。もし、「目的地」が政令指定都市であれば、全国から人や物が行き交い、都市基盤整備も活発化した魅力的な街となるだろう。つまり、「全国区の都市」は、魅力が高く、人が集まって来るのだ。現在の富山市・高岡市は、果たして「全国区の都市」と言えるだろうか?
↓最寄駅が無い氷見海浜植物園の傍を走る氷見線

 賑わう街は、「鉄路の目的地」となる。
 そして、政令指定都市の中心地は、「鉄路の目的地」になれる可能性を秘めている。

↓橋上駅化された城端線のJR砺波駅 <「点と点」から「帯」への転換>

 富山の鉄道は、都市と都市を結ぶ鉄道ばかりだ↓。特にJRの路線は、都市の「点」と都市の「点」を結ぶ場合が多い。例えば、富山ー高岡の20キロ間に、中間駅はたったの3駅しかない。その3駅も、町の中心地になる「都市の駅」だ。利用者は、都市の中心部まで「何かしらの交通手段」で出てきて、鉄道を利用するしかないのである。これは、富山の鉄道が、「2次的交通手段」となっているからだ。
 この「2次的交通手段」は、大きな都市と大きな都市を結ぶような「新幹線(高速交通機関)」では、効率的と言えるが、「在来線(中速交通機関)」などでは、逆に利便性が悪いということになる。今後「在来線」は、地域の足として「生活圏に密着した交通機関」となる必要があるのだ。
 つまり、新幹線開業後の在来線は、「2次的交通手段から1次的交通手段へ、大転換を図る」必要がある。その為には、在来線に多くの新駅を設置して、「点と点」から「帯」へと変える意識が求められる。
 また、鉄路の「点と点」から「帯」への転換に欠かせないのが、「鉄道支援道路」だと考える。「帯」に展開するということは、当然、駅と駅の間隔を狭くしたいという事。その為には、鉄道に平行して走る道路を整備して、沿線開発の後押しをするのだ。田んぼのど真ん中に新駅を作っても、利用者はいないわけで、鉄路の活性化は、道路整備と一体である。それが、北陸新幹線開業後の在来線需要を高めさせる課題ではないだろうか。

<道路の陸橋を活用した新駅>

 生活に密着した新駅を、どれだけ多くつくることが出来るのかが、在来線の存亡となるだろう。そして、その新駅は利便性があるものかどうか?‥これも、重要な課題だと考える。
 鉄路は、街を分断する。
 大きな都市では、鉄道を連続立体高架化して、都市の成長を促進させるが、周辺の生活エリアでは、多額の費用が掛かる「連続立体高架化事業」は不可能だ。特に、富山県の場合、財政面で厳しいものがある。多くの新駅を設置するだけでも、体力の限界があるだろう。
 しかし、利用者の利便性を考えた場合、鉄路を挟んだ両側から駅へアクセス出来るようにしたいものである。
 そこで、考えられる手法として、駅の橋上駅化がある。富山県では、城端線のJR砺波駅が、既に橋上駅化されている。
 石川県では、もっと効率的な駅整備が進んでいる。都市の中心となる「JR金沢駅」と「JR小松駅」は、メインターミナルとして、新幹線が乗り入れする為、在来線も連続立体高架化された。そして、東金沢駅・森本駅・西金沢駅(整備中)・野々市駅などの金沢駅周辺生活エリア駅では、既に橋上駅化されている。都市全体から見た「駅機能の選択」が、戦略的にしっかりと出来ているといえる。
 これに対して富山県では、都市の中心となるメインターミナル「JR富山駅」は、新幹線も乗り入れし、在来線の連続立体高架化も進んでいるが、何故か「JR高岡駅」は、新幹線は分離駅となり、在来線は生活エリア向けの橋上駅化で整備することとなった。更に、周辺の駅整備も進んでいないという状況だ。
 今後、富山県は都市間競争も踏まえて、如何にして都市周辺の生活駅を整備するか?が重要となるだろう。

 富山県でも、生活エリアの新駅は橋上駅化したいものだ。しかし、小さな駅と言えども、30〜40億円程の多額な費用が掛かってしまう。そこで、利用者の利便性が高い「橋上化新駅」を、出来るだけ安価に設置する方法を考えたい。例えば、新駅設置場所を「道路の陸橋」に隣接させる方法も検討できるだろう。幹線道路がある場所は、生活エリアとして発展している。その幹線道路は、主に鉄路を陸橋で跨いでいる場合が多い。この「道路陸橋」に隣接して、新駅を設置すれば、鉄路の両側から利用し易くなると考える↓。

→北陸線と高岡環状道路(蓮花寺陸橋)


<郊外大型店規制を活用した新駅設置案>

 富山では、中心商店街活性化の為に、郊外大型店を規制して商業資本の中心地誘導を進めている。この郊外大型店規制を、新駅設置に役立てることも検討したい。新駅設置予定地には、大規模店規制を掛けずに、大手商業資本を呼び込むのである。
 進出してくる大手商業資本には、新駅と連携するような商業施設として、新駅の建設費も負担してもらうことも考えられるだろう。これによって新駅は、商業施設を一体化させるような橋上駅化や、駐車場をパーク&ライドとして使用できるようにもするのだ。

 まずは、既存店でモデルケースをつくりたいもの。例えば、富山駅ー東富山駅間にある「アピタ富山東店」。アピタの増床を認める条件で、新駅の設置負担を求めるのだ。出来れば、商業施設と連携した駅デザインを目指して、利便性を追求することも検討してもらいたい。そして、高山線の西富山駅ー速星間にも、大手商業資本を誘致して、新駅を併設させたい。
 郊外大型店規制と、鉄路の活性化を組み合わせた取り組みは、行政負担を軽くするだけでなく、市民生活の向上にも繋がると考える。

 また、当HPが推奨する富山環状線などの新線でも、大手商業資本を活用していきたい。
 例えば、既存の「アピタ富山インター店」や「ファボーレ婦中」などには、増床を認める変わりに、富山環状線の駅設置で建設費や用地を負担してもらう。更に、ルート上の富山インターー富山空港間にも、大型店誘導地域として、進出店に駅設置や用地の負担を求めるのだ。
 この他にも、富山空港ーファボーレ婦中間には、工業団地あるいはオフィス団地として分譲する際、駅と鉄道の建設費を、分譲価格に上乗せすることも検討したい。高速道路の開発型インターチェンジと言われる手法を、鉄路や駅設置にも応用するのである。出来るだけ、建設費を安上げる。そして、地域に使われることを目的とした「鉄路の活性化」を目指す必要がある。

<先行する金沢地区を追いかけろ>

 11月2日、JR金沢駅前に、イオングループのファッションビル「フォーラス金沢」がオープンした。駅高架下の「金沢百番街」と合わせれば、売り場面積が2万5千m2の巨大ショッピングセンターの誕生である。これらは、JR西日本が誘致をしたものであるが、何故これだけの商業施設を、金沢駅に整備したのだろうか?。そこには、JR西日本の戦略が見える。
 それは、本業の鉄道で、いかに利用者を増やすかという事である。鉄道を利用する場合のテーマは、前出の通り「目的地」があるかどうかだ。新幹線開業を見据えて、金沢駅を「目的地化」させる戦略だと言えるだろう。

 金沢駅に、周辺都市にはない「魅力的な都市基盤」を整備すれば、周辺から人を呼び込む事が可能となり、富山県や福井県からのストロー化が進む事となる。これは、新幹線を利用して遊びに行きたいという「目的地の場所」を、JR西日本が「金沢駅」に設定したと考えられる。
 現にJR西日本では、地元の要望が強かった福井駅周辺の再開発事業には、参加しない方針を打ち出した。富山駅でも、現状ではJR西日本の商業再開発計画が全く無い。一方、金沢駅では、西口ターミナルビルが建設中であり、今後も金沢駅西側にあるJR所有地での再開発計画など、更なる金沢一極集中の傾向が見えてくる。

 今見る限り、金沢市の方が、富山県より一歩も二歩も先を行く状況だ。富山市では、強力な行政主導で、駅周辺の再開発を行おうという機運が高まってはいる。しかし、魅力ある商業エリアに繋がるかどうかは、どれだけの魅力ある民間商業資本が、富山にやってくるかどうかに掛かっているだろう。「掛け声」だけでは、解決できない面とも言えるのだ。
↑JR金沢駅東口にオープンした「フォーラス金沢」
 金沢では「民間が動かす街」なのに対して、富山では「行政がつくる街」となっている。
 「民間が動かす街」は、政令市など大都市で可能となる手法。それだけ、金沢が魅力的な都市となってきている証拠でもある。既に目ぼしいブランドは、金沢に揃っている。そういった状況の中で、今後「JR富山駅」と「JR高岡駅」は、利用者の「魅力ある目的地」となれるだろうか?

<高岡の場合は、イオンモールを鉄道の「目的地」として位置付けろ!>

 魅力ある商業エリア創出は、1〜2年では作れない。長年の積み重ねがいる。長期的な計画と緻密な戦略、そして忍耐と努力が必要なのだ。当然、一筋縄では行かない。富山市では、コンパクトシティを前面に、都心部への商業資本誘致・誘導を目指しているが、これも1〜2年では、実現しそうにはない。
 同様に、高岡市でも同じ事が言える。特に高岡市では、在来駅と新幹線駅に市街地が分かれることとなる。ただでさえ、「目的地」としての魅力を失っている高岡市にとっては、なかなか打開策が見つけづらいとも言えるだろう。
 高岡の場合、まずは新幹線駅周辺の整備をしっかり行い、隣接地にあるイオンモールとの連携を探りたいものだ。特にイオンモールの更なる充実化を後押しすることで、鉄道を使って行きたくなるような「商業の目的地化」を目指す必要がある。高岡市にとっては、短い時間で実績が上げられる唯一の方法ではないだろうか。

↓路面電車の乗り入れが検討されている「大手モール」

<大手モールの完全トランジットモール化>

 LRTは、もともとヨーロッパで再評価された路面電車。これは、環境と人に優しいユニバーサルデザインを取り入れて、鉄道を街づくりの中心に据えようとしたものだ。
 そして、その究極の街づくりが、「トランジットモール」。人とLRTなどの公共交通機関しか乗り入れない広場やストリートを指している。

 富山市では、「富山駅南北間の250メートルを、トランジットモール化する」という方針を打ち出した。国内初となる試みであるが、これは魅力あるエリアを創出して、駅周辺に商業施設を呼び込もうとする戦略だ。
 一方、これに先立ち、路面電車の市内軌道を、環状線化する計画も浮上している。特に注目なのは、歩行者を中心に据えて整備されている「大手モール」への路面電車乗り入れだろう。

 一部、市議からの異論もあるようだが、富山市の街づくりには、重要な仕掛けとなるに違いない。計画では歩道を減らしての路面電車乗り入れという事だが、地元住民とも十分協議してもらい、車道を路面電車の軌道(複線)に変更し、車が全く乗り入れしない「完全なトランジットモール化」を目指してもらいたいものだ。(下の図は、大手モールの車道部分を、路面電車の軌道に変更した場合の合成イメージである。)
 なぜなら、富山駅をトランジットモールと位置付けても、インパクトに欠けるからだ。現構想では、駅の自由通路と南北駅前広場を歩行者とLRT専用道路にしようというもの。しかしこれでは、金沢駅でも直ぐに真似ができるものだからだ。金沢駅の西口・東口には、既に幅広な歩行者専用広場がある。これに金沢駅の自由通路と組み合わせれば、駅機能とバスターミナル機能を合わせ持つトランジットモールとも言えてしまうからだ。富山駅も金沢駅も、そう印象が変わらない事となる。
 大手モールであれば、街中心部にある欧州型トランジットモールとして、インパクトを持って言えるのではないだろうか。

 更に、計画中の市内軌道環状化に関してだが、現在の単線反時計回り案から、複線案へ格上げも期待したい。丸の内ー大手町間は、富山城址公園に隣接しており、道路拡幅も含めて軌道複線化は容易である。大手モールを挟んで、越前町ー一番町ー西町間も、道路幅が十分にあり軌道複線化は容易だろう。特にこの区間は、路上駐車が可能なコインパークがある事から、これを廃止して複線軌道に充てるだけでよい。軌道は道路北側に集中させた仕様として、歩道と一体的なゆとり空間の創出・演出を目指してはどうだろうか。

<次世代交通システムのモデル都市を目指せ!>

 LRTは、国交省が長年検討してきた構想であるが、これまで、どこの都市も名乗りを挙げなかった。これは、やりたいが意見集約や調整が大変であり、かなりの行政負担が掛かる為だ。しかし、これにあえて挑んだ富山市は、全国からの評価が高い。
 チャンスをいかに活かすか?‥。強力なリーダーシップがなければ実現はしない。富山県では、今後も積極的に取り組む必要があるだろう。そして「次世代交通システムのモデル都市」に、富山県がなる事は「ブランド都市」へとも繋がる取り組みと言える。
 次世代の鉄道技術は、まだまだ多い。改めて鉄道が再評価されている今だからこそ、富山県へ鉄道の新技術を誘致するということは得策だと考える。
 JR東日本や鉄道総合技術研究所などで開発が進められている「燃料電池の電車」や「充電式の電車」、トヨタが開発している「IMTS」など、多彩な技術が控えている。

 新幹線開業後の課題でもある、城端線や氷見線の活用方法も、議論になり始めてきた。一部県議会議員の中には、「次世代鉄道技術のモデル路線」を、この路線に誘致しようという動きも出てきてるようだ。在来線は、このままでいいという訳ではない。富山県の大事な資産を、いかに次の世代へ引き継ぐか。その為に何が考えられるか?‥を、検討する時期に来ているのは間違いないだろう。
 城端線・氷見線に、新しい技術の電車が走る。かつてなら、夢で終わらせるような話だった。しかし、今後は実用性のある生活路線として、しっかりと復権する‥。そうゆう時代が、来たのではないだろうか。勿論、これを実現させるかどうかは、そこに住み人達の向上心・熱意が必要となる。「誰かがやってくれる」や「批判だけする」ということだけは避けるべきだと考える。

<在来線の運営統合と「suica(スイカ)」の導入が必要>

 これからの在来線は、利便性が最優先しなければならない。新駅の確保・運行本数の確保・運行時間の拡大などは、当然の取り組みだが、更に利便性を高めることを図らなければならないだろう。
 鉄道の運営会社が入り乱れると、利用者は不便と感じてしまう。そこで、出来れば第3セクター化される在来線と私鉄の運営主体を一体化したいものだ。しかし、難しい場合は、JR東日本の「suica(スイカ)」を導入することも、選択肢ではないだろうか。

↓氷見海鮮館への氷見線延長は、当HPの提案
 「suica(スイカ)」の導入で、利用者は、鉄道会社やバス会社の違いを気にせずに、また切符やお金も気にしないで、公共交通機関を利用してもらう事が可能となる。つまり、たった1枚のICカードで、在来線・地鉄・万葉線・富山ライトレール・コミュニティバス・路線バスが気軽に乗れる訳だ。
 現在、富山ポートラムが、ICカードを導入しているが、県など行政指導のもと、統一した公共交通ICカード(suicaと提携)を、発行・運営することも早期に検討してもらいたい。
 公共交通機関の利用率が下がり続け、それに対する「有効的な打開策が無い」というような報道も目にする。しかし、この共通ICパス導入だけでも、絶大な効果をもたらすだろう。この実現には、統合的な取り組みが必要な訳で、その為にも行政の積極的な行動力・リーダーシップが必要となる。

 「目的地」がある鉄路再編。この議論は、これからとなるが、富山の浮沈も掛かる事だけに、しっかりとした検討をして頂きたい。そう願うものである。
↑ 建設が進む、JR金沢駅西口ターミナルビルと幅広な駅前歩行者広場
2006.11.3作成 (11.11改訂)
尚、このページで使用している地図は、AtlasMateを使用しております。複製はご遠慮下さい。

<レギュラーHP 富山に 「政令指定都市」 誕生を! リンク>

富山高岡広域都市圏 政令指定都市化 支援政策の提言 その2