石川県の中心都市、金沢市。というより金沢の方々は、北陸の中心都市という自負を強く持っている。2003年1月に、懸案だった新しい県庁が、駅西の副都心ゾーンへと移転する。県と金沢市が、戦後から行ってきた都市改造の最終段階を、半世紀がたった21世紀初頭に完成させようとしている。この金沢市、市町村再編成の流れの中で、再び浮上すべく、政令指定都市を目指した動きが活発化してきた。山出市長が掲げる「学術文化政令市」構想や金沢JCの「北陸州都、金沢市」構想など、積極的な意見が出てきている。しかし、政令市実現までには、多くの課題や問題点を抱え、大変苦戦を強いられているようだ。
 大金沢市が実現できるかどうか、今回の特集は2回に分けて、金沢市の課題を考えていきたいと思います。

 金沢市の人口は、45万6,438人(H12現在)。面積は467.77km2
 言わずと知れた加賀百万石の城下町。明治維新時は、江戸・京都・大阪に続いて全国第4の都市でした。現在は、残念ながら全国第31位。
 しかし、ここ10数年で、都市整備が急速に進んでいることから「一周遅れのトップランナー」とも言われている。
最近の都市整備は
・香林坊第一街区再開発(アトリオ-大和)
・香林坊第二街区再開発(109-エクセル東急ホテル)
・駅前第一街区再開発(ヴィザージュ-全日空ホテル)
・駅前第二街区再開発(ポルテ-ホテル日航)
・駅西50M大通り(駅西ー金沢港間)
・金石街道6車線拡幅
・JR北陸線連続立体高架化
・北陸新幹線連続立体高架化
・外郭環状道路(地域高規格道路)
などをはじめ、隣県の富山や福井を圧倒する、大規模な都市整備が進んでいる。

まもなく始動する石川新県庁
↓石川新県庁周辺
北陸の業務集積都市化を目指す。50M大通り周辺の企業立地は、これからが勝負となる。
都市名 人口 面積
金沢市 456,438 467.77
野々市町 45,581 13.56
合計 502,019 481.33
 政令指定都市は、法律上では、人口50万人以上で、都市規模が大きい事という抽象的な表現になっている。しかし、実際の基準は、人口80万人以上の都市で、近い将来、100万人になると思われる都市が、昇格できるとしてきた。
 この方針が、昨年変更されたのです。
新たに、大規模合併を行えば、人口70万人以上で、将来100万都市になれる見込みが無くても、政令指定都市に昇格することになったのである。
 この事は、これまで地方都市であった地域に、大きな刺激を与えている。
 地域の中枢管理都市以外でも、政令市になれば、地域の中核都市として発展させる事ができる。
 北信越の中では、真っ先に新潟市が名乗りをあげている。新潟市を中心に周辺の13市町村と合併できそうな勢いである。実現すれば、人口78万人の日本海側初の政令市が誕生する。北陸地域へ与える影響は計り知れない。
 当初、新潟県が策定した新潟圏域の合併パターンでは、新潟を含めた10の市町村を示していた。しかし現在は、それを上回る13の市町村が、新潟市との合併を求めるている。新潟市が政令市に昇格確実ということもあるのだろうが、飛び地ができるかもしれない程の人気ぶりである。
 このもてもてな新潟市と対照的なのが、金沢市だ。
 石川県が示した、市町村合併パターンでは、小松市とともに金沢市は対象にはならなかった。
 つまり金沢市は合併候補地がないまま、市町村合併論議を進めなければならないという、大変難しい状況が生み出されたのである。新潟県では、県が政令市を目指す合併パターンを示すことで、かなりの議論が進んでいるが、金沢では、市と金沢青年会議所が政令市実現を叫んでいるだけの状態だ。事態打開への石川県の取り組みも、あくまで各市町村の問題として腰が重い。
 富山県でも、県から合併パターンが示されたが、政令市を狙う組み合わせは無い。各市町村は、県から出された合併パターン案のみで、議論が進んでいる状態である。果たして、富山県の将来像として、政令市を狙らう都市を造らなくて良いのか、疑問であるとともに心配でもある。取りあえず、富山のライバル金沢市が、足踏み状態なのは、有難いと言える。富山にも、まだチャンスは残されている。
 金沢市が狙う政令市は、他の都市と少しスタンスが違う。
金沢市では、まず人口増加が著しい野々市町と合併することで、法律上の政令市昇格可能人口50万人をクリアし、北陸の中心都市だとして、特例で政令指定都市に昇格することを認めさせようと考えている。
 つまり、他の50万都市とは違うんだ、仙台市や広島市などと同じような中枢管理都市だとして、例外的に扱うよう働きかけるというのである。北陸の中心都市というのを、隣接県から認めてもらうというより、金沢市が50万の政令市になることで、国からお墨付きをもらうという、かなり虫のいい考え方である。
 もし金沢市が、50万の政令市になれば、今後議題に上るだろう道州制問題でも、当然のごとくとして、北陸州の州都になる事を主張するであろう。
 いまの石川県の政治力であれば、有り得ない話しでもないが、余りにも傲慢なやり方だとも言える。
 しかし、その金沢的なやり方が、野々市町との合併議論にも現れてしまった。金沢市の強引な主張が、野々市町関係者の反感を買っているようだ。
 野々市町としては、将来的には人口5万人になれるとして、単独市制を目指してきた。町の財政も、金沢市よりは安定しており、合併するメリットが見出せないという。しかし金沢市は、県都である事を前面に出し、強引に野々市町に合併の話し合いを求めてきた。金沢市長と野々市町長の話し合いは、平行線のまま終わり、野々市町として、合併の意志が無く、今後話し合いもしないことを主張したのである。そうすると金沢市では、石川県に野々市町への仲介つまり圧力をかけるよう求める始末。
 更に、金沢市は、野々市町をまわりから崩そうと、白山麓の1町5村に合併の申し入れを行った。白山麓の1町5村は当初、野々市町とともに松任市との合併を検討していたのだが、金沢市の申し入れを今後検討はするという。しかし、あくまで松任市を優先で、議論が進むようだ。
都市名 人口 面積
金沢市 456,438 467.77
野々市町 45,581 13.56
鶴来町 21,477 35.64
美川町 12,454 9.12
川北町 4,922 14.76
河内村 1,205 74.42
鳥越村 3,256 74.15
吉野谷村 1,400 142.89
尾口村 731 137.14
白峰村 1,186 221.88
合計 548,650 1191.33
↑金沢市が模索する、野々市町と白山麓1町5村との合併シュミレーション
 このような金沢的なやり方が、道州制議論にも出てくるかと思われることから、富山は要注意する必要がある。
 しかし何故、金沢市は人気がないのだろうか。50万都市・政令市になることをだけを前面に出しすぎたのが良くなかったのかもしれない。
 新潟市の人気は、最近のもの。新潟市も、人口50万都市化は悲願で、長年懸案だった黒崎町との合併を、昨年ようやく実現させたのです。合併による黒崎町へのインフラ整備が、目に見える形で示されてきたことが、他市町村へ、大きな影響になったのではないだろうか。勿論、県の方針も多大ではある。
 合併特例法が切れる2005年3月までというリミット問題はあるももの、金沢市も、あせらずじっくり取り組めば、打開はおのずと見えてくるはずです。
?小松市が検討を始めた合併組み合わせ案
都市名 人口 面積
小松市 108,622 371.13
加賀市 68,368 151.60
山中町 10,195 154.39
鶴来町 21,477 35.64
美川町 12,454 9.12
川北町 4,922 14.76
河内村 1,205 74.42
鳥越村 3,256 74.15
吉野谷村 1,400 142.89
尾口村 731 137.14
白峰村 1,186 221.88
根上町 15,426 13.57
寺井町 15,308 13.15
辰口町 14,343 57.13
合計 278,893 1470.97
?整備が進む金沢駅ー武蔵ヶ辻間
 金沢市と同じように、県が示す合併パターンで、市町村合併の組み合わせが示されなかった小松市。
 これまで、沈黙を守ってきたが、ここに来て動きが出てきた。県が示した合併パターンから、一歩踏み出し、加賀市・山中町を始め、根上町・寺井町・川北町・辰口町・美川町そして白山麓1町5村との合併を検討しはじめたのである。今後、関係市町村に小松市側から、合併の申し入れを行うという。
 実現すれば、人口約28万人、高岡市や福井市を抜き、特例市を狙える都市になる。
 今回の小松市の動きに、金沢市は勿論、松任市なども黙っていないだろう。←特に松任市では、石川郡や川北町、白山麓1町5村で合併を検討しており、実現すれば人口15万を超える都市が誕生するからである。
高岡市や長岡市などと対等になる。
 松任市としても、人口15万人になれば、高速道路のインターや北陸新幹線の松任駅設置に弾みが付く。これまで、金沢市と小松市に挟まれて、いまひとつ存在感が無かったこの地域にとって、まさに大きな転換期を迎えることができるのである。
 
勿論、金沢市にとっても、傍観するわけにはいかないだろうから、美味しい話しを持ち掛けるしかない。
 これから短い期間に、金沢市と小松市が、激しい鍔迫り合いを見せ、松任市が絡むという複雑な構図を見せるのは、間違いない。
?松任市を中心とした合併組み合わせ案
都市名 人口 面積
松任市 65,370 59.93
野々市町 45,581 13.56
鶴来町 21,477 35.64
美川町 12,454 9.12
川北町 4,922 14.76
河内村 1,205 74.42
鳥越村 3,256 74.15
吉野谷村 1,400 142.89
尾口村 731 137.14
白峰村 1,186 221.88
合計 157,582 783.49
↓オフィスビルが立ち並ぶ武蔵ヶ辻-香林坊間
都市名 人口 面積
金沢市 456,438 467.77
津幡町 34,304 110.44
内灘町 26,560 20.38
合計 517,302 598.59
 金沢市が、50万都市を真剣に狙うなら、まずは実現可能なところから検討する方が、得策だと考えます
 現在、金沢市は野々市町との合併に拘ってますが、別に野々市町で無くても、津幡町と内灘町との合併で、50万都市にすることができる訳で、そちらとの協議を先に進めても良いのではないだろうか。
 都市集積規模から言えば野々市町は魅力ではある。しかし、合併特例法の期限が迫っており、より実現性が高い方を優先させ、合併のメリットを、示してあげる必要があるだろう。
 特に、津幡町と内灘町の隣りでは、宇ノ気町・七塚町・高松町が合併して「かほく市」になることが確実視されており、津幡町・内灘町は、取り残された状態である。 金沢市としては、合併話しは、しやすいはず。
 津幡町と内灘町が、合併メリットを目に見える形で、現れれば、野々市町を説得できる材料になると考えます。また仮に、野々市町が松任市などと合併したとしても、二段階合併として、石川郡地域との合併を検討しても良いわけなので、金沢市は、じっくり取り組む姿勢をしめすべきだと思います。
 今の金沢市は、かなり焦っているように見える。
 新潟市の動向やライバル富山市の動向が気になるのだと思われるが、現状、富山市の合併組み合わせ内容は、全く魅力が無く、金沢市が心配する程では無い。金沢市は、足元を固めることに、当面専念することが、とても大事だと思われる。
↓金沢市が、人口70万都市を目指した場合の、合併パターン私案
 50万都市で、政令市だと自慢しても、全国的には通用しないでしょうし、同じ50万都市を目指す富山市も認めないと考えます。
 金沢市が、真剣に政令指定都市を目指すのであれば、特例で政令市にさせて欲しいとかでは無く、正々堂々と70万都市を実現させてもらいたいものです。
 金沢の経済界でも、同様な意見があるようだが、70万都市は、全く実現不可能な話しではない。手取川から能登の入り口までを、まとめあげれば、何とかなるものです。
 勿論、一気に実現できるわけではないでしょうから、二段階合併で対応する必要があります。
 既に合併が決まっている「かほく市」に、津幡町・内灘町と合併した(新)金沢市、それに松任市を中心に石川郡と川北町をまとめた(新)松任市が、時間を置いて合併することを検討してはどうだろうか。
都市名 人口 面積
金沢市 456,438 467.77
松任市 65,370 59.93
野々市町 45,581 13.56
鶴来町 21,477 35.64
美川町 12,454 9.12
川北町 4,922 14.76
河内村 1,205 74.42
鳥越村 3,256 74.15
吉野谷村 1,400 142.89
尾口村 731 137.14
白峰村 1,186 221.88
津幡町 34,304 110.44
内灘町 26,560 20.38
七塚町 11,270 6.39
宇ノ気町 12,573 31.97
高松町 10,826 26.40
合計 709,553 1446.84
 ←金沢市の都市基盤整備は、政令市並の規模を進めてきました。しかし、もう一歩前進するのであれば、根本的な戦略から見直す必要があるでしょう。
 何故なら、政令市は、都道府県と対等な立場や権限を持つわけで、市の独自な政策が求められる事となる。今の金沢市には、まだまだ石川県という後ろ盾が必要なのが現実です。
 一歩前へ踏み出すことは、金沢市がもっと大人になる必要があるのではないだろうか。
 次回の特集では、金沢のもうひとつ大きな野望である「北陸州都」を目指す動きを検証したいと思います。
2002.11.1作成
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